みいの寿 その3

福岡県三井郡大刀洗町にある酒蔵 みいの寿

酒米が食材とすると、麹は料理人で、酵母がその料理を食べる人

「よく酒の話をするときに言うのですが、酒米が食材とすると、麹は料理人で、酵母がその料理を食べる人。ワインは初めから糖分があるんですが、米には糖分が無いので、その米のたんぱく質を麹菌が糖分、すなわちブドウ糖に変え、そのブドウ糖を酵母が食べることでアルコールを出します。

酵母は、協会7号や協会9号など種類がいろいろあります。酵母と一括りに言っても、人間もそうなんですが、日本人とアメリカ人とでは同じ人間でも全く違う。肉ばかり食べていたら体臭が臭くなるし、野菜ばかり食べていたら体臭があまり無くなったり。酵母も一緒なんです。その酵母が何を食べるかによって出すものの匂いが全く異なるというのが、酵母の原理です。そして、組み合わせは無限。

いい材料があっても、麹である料理人がちゃんと料理しないといい酒ができない。麹を変えることによっても味が変わるし、それを食べる酵母によって出すアルコールも変わります」。

麹には、米を溶かす力とグルコースをつくる力がある。毎年米の状況によって、4,5種類を使い分ける

みいの寿では、4,5種類の麹を使い分けるという。

「麹は、大きく分けると米を溶かす力とグルコースをつくる力があり、その二つのバランスが麹の種類によって異なるので、毎年、米の出来によって使い分けています。

麹は、振る量、これがまたセンスと言えます。米の出来は毎年異なるので、僕の強みと言えるのが、全国にネットワークを持っていること。全国ですでに酒造りをはじめた酒蔵に、どれくらい溶けやすいのかなどその年の米の状況を聞いて、麹をふる量を調整しています。その量の違いによって、酒の出来が異なります。

技術がきちんとあるということを示すためにも、全国新酒鑑評会に出すのですが、平成14年から28年の間で、14回入賞。そのうち10回が金賞入賞。金賞が取れるのも、このネットワークによる情報が強みです。金賞を取ることで、造っている酒もきちんと評価されるんだと思います」。

酒造りは、1に麹、2にもと、3に造り

酵母は、日本醸造協会から購入できるのだが、みいの寿では10年ぐらい前からオリジナルもつくっているそうだ。

「材料が糸島の山田錦であったら、だいだい造られる酒は変わりません。では、いつ変わるかといったら、麹で変わるんです。麹って、麹菌自体は一緒だけど、麹をつくるのは各蔵、僕たちなんです。ここで一番味が変わります。

僕は、酒造りは科学とセンスと情熱と言うのですが、科学の中には、化学、人間学、自然学と全部入っています。センスというのは、いろんな人にカレーの材料を渡しても、味は違う。同じ水分量の野菜はないし、同じ野菜の味はない。『料理はさしすせそ』というけれど、その調味料の順番を変えるだけで、味が変わるのは化学変化。入れるタイミングでも味は違う。例えば、塩しか入れない料理でも、塩を入れるタイミングだけで味が変わります。酒造りは江戸時代からずっとやっていて、同じ山田錦、同じ酵母でも出来上がりはこれだけ変わる。そこは、センスでしかありません」。

年間2000種以上の日本酒を飲む

酒造りはセンスというが、そのセンスはどうやって磨かれていくのだろうか。また、酒を見極める舌は、どうやって鍛えられるのだろうか。

「年間2000種以上の日本酒を飲んでいます。飲み続けていたら、勉強するつもりがなくても、味や香りの違いがわかってきます。それが本当に不思議なんですよ。

酒コンペンションという1700種以上の出品酒のあるコンクールの審査員をさせてもらっているのですが、予選では、1700種以上から500種ぐらいまでに落とすんです。決戦では、予選の時と同じお酒が出てくるので、予選の時と似たような点数をつけないと、この人味がわからないということになってしまうんです。1700種の中でも500種の中でも評価を一致させることができる。同じような評価をつけられる。審査員の僕たちもそこで評価されているのです。

日本ソムリエ協会では、2017年の8月から日本酒に特化した認定制度である「J.S.A.SAKE DIPLOMA」がはじまります。お客様に伝えるように酒の表現方法に重きを置いています。日本酒もワインと同じで、どんどん表現が豊かになっていくのかもしれませんね」。

先見の明も必要

「先見の明というのは、必要だと思います。夏酒にしても、8年前に出したのですが、その当時は夏酒というものはほぼありませんでした。ここ5年ぐらいですね、夏酒が増えたのは。ワイン酵母を用いた日本酒・イラリアンラベルシリーズにしても、日本酒が売れないから、ワインを好むお客様にアプローチするために造りました。親父にしても、早い段階で本物の日本酒造りに切り替えたのも、先見の明があったんだと思います。

先を見越す力もですが、若い人には、『なぜ、やるの?』という発想を常に持ってほしいと思います。前からやっているから、なんのためにやっているかわからないけどやるではなく、日常の当たり前から疑問点を見つけることが大切です。昔の杜氏さんは、こうすればこうなるとわかっていたけれど、科学を勉強していない。僕らは科学を勉強しているから、感覚的ではなく科学的に見極めることができるのです。本当に、毎年1年生の気持ちで酒造りをしています。米の状態が変わるので、プレッシャーはとんでもなくあります」。

その4へつづく。

 

施設名
株式会社 みいの寿
住所
福岡県三井郡大刀洗町大字栄田1067-2
電話
0942-77-0019
その他
※蔵で販売は行っていません。
RSS
Facebook
Twitter
Google+
http://ginjoka.com/introduction/brewery/miinokotobuki-3">
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial