博多日本酒吟醸香

酒邸 吟乃香

八女茶や雛人形などで知られる福岡県八女市。江戸時代から酒造りをしている「喜多屋」のすぐ近くに「酒邸 吟乃香」はある。

喜多屋関係者が経営するだけに、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2013で世界一の日本酒に輝いた「大吟醸 極醸 喜多屋」など、喜多屋の製造する日本酒や焼酎を、酒に合う肴をつつきながら思う存分堪能できる。

つくりは、古い日本家屋。広くて長い縁側が趣があっていい。暖簾をくぐって、靴を脱いで、部屋に上がる。テーブル席のみ。予約のみでやっている夜の和会席コースを味わった。

地元矢部川でとれた川エビの甘露煮、喜多屋の日本酒の酒粕で粕漬けにして炙った明太子など、酒の進む前菜が並ぶ。

イカの塩辛は、臭みもなくて、酒にぴったり。刺身も新鮮。吟醸酒がほしくなる。小さな鍋料理も出てきて、寒い季節には、体も心もポカポカしてくる。

焼き魚のあとは、お茶どころの八女だけに、茶そば。つるつる感が心地いい。

甘酒を頼んでみた。添加物など何も加えてない自然の甘さ。酒蔵のつくる、甘酒はとっても気持ちのいい味だ。

酢の物や旬の食材を使った天ぷらなど次々と料理が運ばれてくる。

最後に焼きおにぎりに、これまた喜多屋の酒粕を使用した粕汁。吟醸香が漂って、ちょっと上品な粕汁である。デザートに柿を食べて、フィニッシュ! お腹いっぱい。とても満足した。

料理人を務める木下雄一郎さんは、子供のころから実家の横にある酒蔵で日本酒造りを手伝っていたという。「洗米、仕込み、ムロの作業に、搾り。日本酒を造るためのいろんな工程を経験しましたね」。ただ、酒造りの道には入らなかった。

東京の大学に出て、ゲームなどをつくるIT系の企業に就職。30歳を過ぎて、地元に帰る。八女観光の手伝いなどをする中で、「お酒をメインにした飲食店をやってみたい」と思い立ち、料理を修行。2014年10月に「酒邸 吟乃香」をプレオープン、翌年1月に正式にオープンさせた。

「八女は野菜、果物、川魚など食材が豊富。それに、喜多屋のお酒がそろうので、八女のおいしいものを楽しんでもらいたいです」

店のすぐ横には田んぼがあり、酒米「吟のさと」が育てられている。刈り取られた米は、喜多屋で日本酒に生まれ変わり、吟乃香で味わえる。ぜひ喜多屋の酒造りを見学(要事前予約)した後、喜多屋の酒をおいしい肴とともに、思う存分味ってほしい。まさに「酒蔵ツーリズム」。宿泊先を確保して、楽しんでもらいたい。