山田錦の田植え

福岡県糸島市の長糸地区で山田錦の田植えに参加

7月1日、福岡県糸島の長糸地区で行われた山田錦の田植えに行ってきた。当初は、6月24日の予定だったが、水が足りないとのことで1週間延期に。子どもから大人まで約30人で、手植えによる山田錦の田植えが行われた。

山田錦の産地として知られる、福岡県糸島

酒造りに適するように品種開発された米を酒造好適米と呼ぶのだか、山田錦といったら、酒造好適米のエースだ。酒造好適米は、大粒で稲の丈も高く、米の中心部にある白く濁った部分である「心白」が多い。この心白が大きいほど、菌糸が中心まで入り、いい麹に仕上がる。ある蔵元の杜氏は、「糸島の山田錦は、心白がより中心にある。心白がずれていると、削る時に心白まで削ってしまうのですが、糸島産の山田錦は、たくさん削ってもちゃんと心白が残るので、そこが糸島産のよさ」と話していたのを思い出す。

平成27年産酒造好適米の生産量は約10万トンで、兵庫、新潟、長野、岡山、富山の5県が約6割を占める。山田錦と五百万石の2銘柄は、全生産量の約6割。続いて、美山錦、雄町と続く。平成27年産の山田錦は、63%が兵庫、岡山で8%、山口で4%となっている。「農産物検査結果」(農林水産省)平成28年1月31日現在の速報値を参照。

山田錦は、兵庫県生まれ

山田錦は、生産量が圧倒的に多い兵庫県で開発された。明治末期から大正にかけて栽培されていたのが山田穂という品種で、味のある大粒種だったものの、茎が長くて倒伏しやすく収量も比較的少なかったようだ。そこで、山田穂と短稈渡船(たんかんわたりぶね)とを人工交配し生まれたのが、山田錦。昭和11年に誕生した。

昼夜、10度以上の温度差が必要

福岡で山田錦を本格的に栽培を開始したのは、昭和36年ごろから。糸島の中で山田錦が作られているのは、雷山、長糸、一貴山、福吉など山側の地域だ。「日中はいくら暑くてもいいんだけど、夜冷えないと心白ができない。昼夜10度以上の温度差が理想。山側の田は、夜冷える。夜冷える間に栄養分が取り込まれる。ところが、夜も暑いと栄養分が消化されて心白ができにくい」とのこと。

「稲を植えて、肥料を入れすぎると徒長してしまう。人間なら足が長くていいんだけど、山田錦の場合、足が短いのをつくらなくてはいけない。山田錦はもともと背丈が長いので、より短くつくる。なぜかというと、背丈が高くなってしまうと倒れやすい。倒れてしまうと品質が落ちる。そのために肥料の加減が必要ですね。しかし、あまり加減しすぎると、収穫量が少なくなるから、そのさじ加減が難しい」と地元の農家さんが教えてくれた。

「自然のことだから、人間にはどうこうできん」。

ちなみに、福岡県生まれの酒米には、夢一献と吟のさとがある。 

福岡県産米・夢つくしを親に持つ、夢一献

夢一献は、平成15年に福岡県で誕生し、平成17年から県内で本格的な栽培がはじまった。現在は、久留米地域を中心に栽培されている。福岡のブランド米・夢つくしを親に持つ。最大の特長は、倒れにくいこと。比較的育てやすく収量が多い。

筑後地方で栽培され吟醸酒に適した、吟のさと

平成8年に福岡県筑後市にある九州沖縄農業研究センターで誕生。筑後地方の気候や土壌に合わせて開発され、山田錦を親に持つ。「筑後地方・八女に根付いた吟醸香用の酒米に育ってほしい」との思いから、吟のさとと名付けられた。平成21年ごろから八女地域で本格的に栽培が開始された。

さて、田植えは、1時間半ほどで終了。ドロドロの田んぼに入っての作業は楽しいと思いきや、案外子どもには「ヌルヌルしていて気持ち悪い」と不評だった。きっと遊び慣れていないのであろう。大人のほうが、むしろ童心に戻っていた。

労働のあとのキンキンに冷えた日本酒や甘酒は、最高!

田植えが終わったら、近くの水場で手足を洗い、みんなで昼食。塩麹入りのトマト煮込みにポテトサラダ。キンキンに冷えた地元の白糸酒造の酒もあり、みなさん心地よく酔いしれていた。私は車のため飲めなかったのだが、キンキンに冷えた甘酒が、暑さのせいかこの上もなく美味しかった。

7月5,6,7日と、九州北部地方では記録的な豪雨が続いた。5日に福岡県の筑後地方に蔵元取材に行き、午後から驚くような土砂降りが発生。いろいろと心配なことが多いのだが、きっと九州人は立ち直りが早いと信じている。

 

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