中洲中島に葡萄家あり。
博多は中洲中島。中洲と名のつく地名は、ネオン煌めく賑やかな繁華街をイメージしがちだが、中洲中島は昭和通りを渡りどちらかというと閑静な街である。そこに居を構え、大人の隠れ家として、Europian dining葡萄家は、しっとりと凛と存在感を増している。
オーナーシェフは、西鉄グランドホテルで修行し、冷泉公園近くにて福岡名物であり、また異質な洋風屋台の欧風屋台 菊屋を引き、この地にたどり着いた。
洋食は、ときに美しく。時に儚く。
皿にどう盛り付けるか?高さを出し立体感で見せたり。箸の運びが遅いお客様には、冷めにくい盛り付けで料理の状態を配慮したり。屋台を引いてたからこその超密接空間接客術は、完全オリジナルのOne to Oneを演出する。なかなかの座席数を構える箱物だが、きちんと行き届いたサービスで来る者を皆、満足させる。
焼きビーフンはカレー風味。
もはや本当にEuropian dining葡萄家なのか?甚だ疑問だが、メニューを観る限り、また出来上がりの皿を一目見る限り、無国籍なボーダレスであるが、口に含むときちんと日本人の洋食という概念の延長線上にテイストを保っている。うまいものはうまい。さすが博多。さすが九州。
圧巻のビーフシチュー。
Europian dining葡萄家を代表するメニュー。外さないし外れない。寒い屋台でこれまで数多くの人の体と心を温めたビーフシチュー。デミグラスソースで肉を出すと、肉の旨味を相殺している。だからこそ、肉をこれから煮込む分は引いて作っているんです。オーナーシェフ談。
スペイン風イモサラとカキのアヒージョ。
スペイン風イモサラ。アンティパスト感覚で食べていたが、いちいち美味しい料理である。箸も酒も進む。さすが屋台出身者。そしてカキのアヒージョ。欧風といえば欧風。スペイン系のラテンの血が騒ぐ料理である。日本酒もそうだが、多国籍無国籍で、酒と料理がすすむものがふんだんに揃えられている。本文章一番最初の写真は、熊本和牛のハツのステーキ。オリーブとサンドライトマトの酸味が漂うこれまたお酒が進む料理である。
葡萄家オーナーシェフ前原誠喜が語る酒場とは?
締めのカレー。カレーをルーだけ食べる分には、翌日にいいらしい。ただ此処のカレーは無性に食べたくなる。長々と語ってきたが、最後に葡萄家オーナーシェフに聞いてみた。繁盛する酒場とは?日常と非日常。うつつとうつろい。日常を忘れられる空間にしたい。と語る。2013年3月10日からの開業で、筆者はその1ヶ月後初めて訪れた。毎日違う葡萄家の顔が見ることができる。愛される店であり、愛を感じる店。葡萄家。今後も通い続けるお店といえるだろう。
最初の一杯は、ゑびす酒造のらんびきハイボールでした。前原さんいつもありがとうございます。