福岡県にある8つの蔵の統一ブランド、本格焼酎「古久」
先日、本格焼酎「古久(こきゅう)」の取材で、いくつかの蔵を巡った。「古久」は、福岡県にある8つの蔵の統一ブランド。麦を原料とし、麹のみで発酵を促し、単式蒸留法で蒸留を行った40度以上の原酒を、福岡県八女市黒木町にある旧国鉄のトンネルで、こだわりのかめに入れ、5年以上寝かせたもの。各蔵によって、原酒が異なるため、8つの味わいを持つ。それぞれの「古久」を飲み比べてみたいものだ。
その取材で訪れたのが、福岡県三井郡大刀洗町にある研醸だ。
研醸といったら、にんじん焼酎が有名だ
昭和58年の創業当時、あたり一帯ではにんじん栽培に取り組み、規格外の処分に困っていたそうだ。「にんじんをなにかに活用できないか」と思っていたところ、近くの北野町に農業学校があり、そこの発酵学専門の先生が、「にんじんに糖はそんなに多くないけれど発酵するはずだと」言って、実際にテストしてたたところ、見事に発酵。にんじん焼酎をつくるために、会社を立ち上げ、今に至るそうだ。
にんじん焼酎は、芋焼酎でいう芋の部分をにんじんに変えてつくる。一時発酵は米麹で行い、二次発酵に、にんじんを投入する。にんじんは溶けにくいので、蒸してピューレ状にしてから。当時、二次発酵で100%にんじんを使っていたので、できた焼酎は独特の甘みと香りがあったそうだが、現在は、にんじんと米を加えてつくる。当時、野菜でつくる焼酎は珍しく、全国放送のテレビや新聞で取り上げられ、あっという間に全国に広がったそうだ。
にんじん焼酎ブームが落ち着いたころ、次は定番の麦焼酎をということで、麦へ挑戦した。ある酒造会社へ見学に行ったところ、麦焼酎のタンクの上に浮いている油を、紙に吸い込ませて取っていたそうだ。原料に火をあてて使えば、油はあまり出ないのではと。そこで、70%ほど磨いた麦を炒ってから使うことにした。炒っているので、香りは断然香ばしい。品評会ではこげ臭と評価されなかったそうだが、この香ばしさがお客さんには好評。こうしてできたのが、「焙煎麦焼酎」。油分が少ないから、二日酔いがしにくいというメリットもあった。
この焙煎麦焼酎に、さらに磨きをかけたのが、「完全焙煎麦焼酎」。今までは掛麦を焙煎していたのだが、麹用の麦まで焙煎した(特許取得)。今まで以上に香ばしい香りとコクがあるとのこと。
ただでさえ香ばしい焙煎麦焼酎に、ドライオンツリー栽培で収穫した貴重な珈琲豆を漬け込んだ珈琲&焼酎「新黒」
珈琲&焼酎「新黒」は、樹の上にて完全乾燥するまで残したドライオンツリー栽培で収穫した、貴重な珈琲豆を焙煎し「完全焙煎麦焼酎」に漬け込んだもの。
実際にロックでいただいてみると、25度とやや高めの度数だが、ほんのりと珈琲の深い香りがした。お酒と珈琲好きには、たまらないかも。飲む前は、牛乳と割ったら、まろやかで飲みやすいかもと思っていたが、断然このままロックで味わいたい。完全焙煎麦焼酎と焙煎した珈琲豆のそれぞれの良さが引き出され、洗練された深いコクと味わいを感じた。焼酎は久々に飲んだのだが、「新黒」は、頑張った自分を心落ち着かせたい時に、自分へのご褒美としていただきたい。そんなお酒だ。