博多日本酒吟醸香

旭松酒造

ニシキゴイが泳ぐ黒木の酒蔵

濃い目の料理に負けないどっしりした味わい

福岡県八女市黒木町。有名な黒木の大藤に続く「鯉の泳ぐ通り」沿いに、旭松酒造はある。蔵の裏手の用水路では、放流されたニシキゴイが気持ちよさそうに泳いでいる。「毎日、餌やりしてますよ」と専務の松木誠さんがにこやかに説明してくれた。

取材日は大雨の直後で水が濁っていたが、普段はとっても透明度の高い水が流れているそう。鯉が心地よさそうに、尾ひれをなびかせるほど、水がきれいな土地なのだ。

松木さんは「うちの酒造りは地下水を使っています。水質はかなり柔らかいです。だから、旭松の酒の飲み口はとてもいいんです」と胸を張る。

旭松酒造は、日本酒伝統の冬場の寒仕込みのみ。「最も日本酒が造りやすくて、おいしくできる時期なので」と松木さん。大正5年の創業当時から変わらない、昔ながらの手づくりによる仕込みは、旭松のこだわりだ。

他の蔵との違いと言えば、米をセイロで蒸すことだという。「お米がふんわりと仕上がるんです」。溶けやすい米も、セイロを使って蒸すと溶けない。溶けすぎると、酒になったときの雑味につながる。つまり、セイロを使えば、嫌な雑味が出ないというわけだ。

ただセイロは1段に30キロしか入らないから、一回に蒸すのは6段で180キロ。大量生産はできない。少ない量を手間ひまかけて、仕込んでいくのが、旭松スタイルなわけである。

酒をしぼる機械も昔ながら。昭和9年製の油圧式圧搾機である。力も微調整できるので、雑味のない酒に仕上げることができる。「酒の種類によって力の入れ具合を変えています」と松木さん。力は感覚によるところも大きく、まさに職人技である。

レギュラー酒として紹介してもらったのは、「清酒旭松 特選 本醸造」。松木さんに特長を聞くと、「濃厚」という言葉が返ってきた。「日本酒の中では味が濃い方なので、食中酒として楽しんでもらえます」

濃い目の料理にも負けない、どっしりとした日本酒。ぜひ夕食のお伴に、ぜひ呑んでみたい。