博多日本酒吟醸香

瑞穂菊酒造

筑豊を愛し、筑豊の酒を造る

合鴨農法無農薬米を使った「一鳥万宝」

米をつくる農家と酒を醸す蔵元。

この2つの熱意と協力が、瑞穂菊酒造を代表する「一鳥万宝(いっちょうまんぽう)」という日本酒を生み出した。

令和元年。

福岡県飯塚市の造り酒屋が、地元農家の合鴨(アイガモ)農法で無農薬栽培した米を原料に、「一鳥万宝」を造り始めて23年目を迎えた。

「地元の人たちとのつながりの大切さを考えさせてくれた酒です」

そう話すのは、瑞穂菊酒造代表で杜氏も務める小野山洋平さんだ。

1968年(明治元年)、筑豊地方で創業した実家の蔵に、大学卒業(1988年)ととも入った。

1994年には、周囲から「大丈夫か?」と心配される、20代の若さで杜氏を務めることになる。

そんな暗中模索の酒造りがスタートしてすぐだった。

プロフェッショナルな農家、古野隆雄さん

1人の人物から相談を受ける。

隣町の農家、古野隆雄さんだった。

古野さんは、NHKのプロフェッショナル仕事の流儀に登場するほど、農業の世界では有名な人。

無農薬農法を早くから実践し、合鴨農法のお米づくりで広く知られている。

古野さんの相談は「合鴨米で酒ができないか? 米と合鴨で晩酌ができないか?」というものだった。

合鴨米といえば、食用米。

うまくて透明感のある酒造りには、やはり山田錦などの酒米が適している。

それでも、みんなが食するお米で酒造りに挑んだ理由について、小野山さんは言う。

「古野さんの頭の中には、自分たちの畑で育てた食材で食事をして、晩酌には自分たちの田んぼで育てた米でつくったお酒を使いたい、という物語があったんです」

合鴨農法米「一鳥万宝」が誕生

地元農家の栽培した米を持ち込み、地元の酒蔵が酒を造る。

昔はどこの地域でも見られたコラボが実現したとき、純米吟醸酒「一鳥万宝(いっちょうまんぽ)」は完成した。

出来上がった日本酒は、「きれいというよりは、味わい深い酒ができました」と小野山さん。

「晩酌で飲むにはちょうど良い酒です」とにっこり笑う。

古野さんとつながったことで、小野山さんの目は、蔵のある筑豊という地域に向いていく。

「地元の人とつながっていくことが、うちの酒造りの道だと思いまして」

瑞穂菊酒造の原料米の多くが地元筑豊産

今や蔵の清酒造りの原料米は、多くが筑豊産だ。

筑豊炭田で栄えた飯塚で今も酒造りを続ける瑞穂菊酒造。

筑豊の地酒にこだわり、地元の人に愛される「味わいのあるお酒を造っていきたい」と、小野山さんは力を込める。