福岡では珍しい、旭菊酒造の生酛(きもと)純米
生酛造りは、最も伝統的とされる酵母造りの技法のことで、江戸時代に確立された仕込み方法だ。蔵内に浮遊している天然の乳酸菌や酵母菌を取り込み、ゆっくり発酵させる。まず、桶の中で米麹をすり潰す「山おろし」という作業を行う。「山おろし」は、蒸し米、米麹、水を合わせて、少量ずつ桶に入れ、櫂棒ですり潰す。この作業に2日間かかり、その後タンクに入れて、約30日間で酒母が完成する。
旭菊酒造の生酛造りの酒は、2種類ある。草色ラベルの「生酛純米27BY」とオレンジのラベルの「生酛純米クラシック26BY」。生酛純米27BYは、山田錦使用・精米歩合60%、7号系酵母使用。日本酒度+5、酸度2.0。純米クラシック26BYは、夢一献使用・精米歩合65%、7号系酵母使用。日本酒度+4、酸度1.8。旭菊酒造の記事はこちら。
生酛は、後味が明らかに違う。速醸だと、スッと切れるようなところで、生酛は後からグッとくる押し味がある
旭菊酒造の原田さん曰く「生酛造りのお酒は昔ながらのいい酒といいますか。生酛の特徴といったら、味わいです。味自体は他のお酒とは変わらないけれど、後味ですね。後味が明らかに違う。速醸だと、スッと切れるようなところで、生酛は後からグッとくる押し味があります。それが、深い味わいというか。旭菊の場合は冷よりもお燗なので、お燗にするとさらにそのグッと来る押し味が強調されて。これが生酛の特徴なんだとわかります。
生酛は熟成酒タイプなので、2年3年熟成させると、速醸と生酛の差が色濃く出てきます。速醸は熟成させた時に、ものによって熟成の進行が違い再現性がない。生酛は、1年経ったらここ2年だとここ、と階段を昇って行くような熟成をしていきます。最近、熟成酒も注目をされつつあるんですが、熟成させた生酛は熟成酒としての魅力も兼ねていると感じています」とのこと。実際に飲んでみると、確かに、口の中にずっといる。確かな余韻が残るのだ。
今度、改めてご紹介するが、この旭菊酒造の生酛純米は、福岡市中央区大宮にある「入江酒店」て手に入れることができる。「入江酒店」では旭菊酒造の酒が多数揃っている。
「基本的に、生酛のお酒はお燗のほうが美味しいです。ぬる燗ぐらいで、42~45℃ぐらいでもすごく膨らみますね。夏でも燗つけて飲んだほうがいいぐらいです」と店主の入江政行さん。今度は、熱燗・温度違いで飲み比べてみたい。どれだけ味や香りが変化するのか楽しみだ。