旭菊酒造

旭菊酒造が目指すのは、お燗にして旨味が増すような酒造り。原始的な「生酛(きもと)仕込み」や新政で有名になった「6号酵母」などにも取り組む

「城島酒蔵びらき」や最近行われた福岡の55蔵が集結した「&SAKE福岡」で、「燗酒」を提供しているのが印象的だったのが、福岡県久留米市三潴町にある旭菊酒造だ。日本酒を本格的に飲みはじめて1年ほどの日本酒初心者の私にとって、「燗酒」はまだまだ未知の世界。だが、「燗酒」には適した日本酒があり、さらにその日本酒の味わいをより豊かに広げてくれるように思えた。

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旭菊酒造の創業は、明治33(1900)年。今年で118年を迎える。目指すのは、朝日のように勢いのある切れの良い酒ということで「旭菊」と名付けられたそうだ。2010年には蔵が全焼という災難に見舞われたが、翌2011年には新しい仕込み蔵が完成し今に至る。現在、全体の8割が純米酒で、福岡県内というより全国の地酒専門店で流通しており、手掛ける蔵が少ない「生酛(きもと)仕込み」や新政で有名になった「6号酵母」にも以前から取り組んでいる。

「東京農大の醸造科学科4年生の5月に、火事が起きました。卒業後はしばらく酒とは離れて違うことをやろうと考えていたのですが、神様から『そんなことをせずにすぐに蔵に戻れ』と導かれたのかどうか、すぐ実家に戻り、新蔵とともに酒の道を歩み始めました。」と話すのは、旭菊酒造の後継者である原田頼和さんだ。

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「うちのお酒は、吟醸や大吟醸にしても香りの華やかさよりも味わい重視。今までの造りでも香りは出せます。業界では、より華やかな香りが出やすい酵母を使って造る蔵元が増えつつありますが、うちは昔ながらのお燗にすると旨味が増すような酒を造っています」

穏やかな口調で話す原田さんは30歳と若手だが、酒への熱い思いが話の節々から垣間見える。

米から造られている日本酒は、温めてこそお米の旨味が出てくる。ご飯と同じように日本酒も温めて飲む

「今は香りが華やかなタイプの日本酒が多く冷酒で飲むことが多くなっていると思うのですが、うちでは冷酒より常温からお燗での飲み方をおすすめしています。普段、食卓で米を食べる時はあたたかいご飯を食べるじゃないですか。日本酒もお米から造られるのであれば、温めてこそお米の旨味が出てくると思うんです。冷酒がダメというわけではなく、ご飯と同じように日本酒を温めて飲むということは普通であっていいと思っています。

うちが目指すのは、食事をしながらずっと飲めるような、食事に合う食中酒。あくまでメインは食事で、酒はその脇に立つようなポジションでありたいと思っています。

厳密に言うと日本酒には各銘柄ごとの適正温度があります。日本酒は温度帯を変えることで、様々な食事との組み合わせが提案できるのがおもしろいところです。旭菊では、年間を通してお燗を勧めているんですが、取扱のある飲食店の中には純米大吟醸でもお燗にします。35度ぐらいのぬる燗にしているんですが、トロっとして美味しんですよ」

旭菊酒造で使う酵母は、9号系、7号系、6号系の3種類

旭菊酒造で使う酵母は3種類ある。

「9号系は、どの蔵でも使う基本となるような酵母。優しくて落ち着いた香りと味わいなので、日本酒に馴染みがない人でも、9号系のお酒は飲みやすく、日本酒の世界にすんなり入れるお酒といえます。それに比べ、7号系は、酸の立つ酒に仕上がります。7号系を使うのは、酸の立つような、お燗にしてもいけるような酒を目指しているからです。酒飲みの方には、7号系酵母が好まれる傾向にあり、9号系は物足りないかもしれません。6号系酵母は味わい深い酒になります。酸は7号系ほど出ず、9号系に比べると深い味わいです」

使っている米は、山田錦と夢一献の2種類だ。

「山田錦は福岡産で、糸島、遠賀、大木町の山田錦を使っています。糸島では無農薬の山田錦もつくっていただいています。産地によって、米にも違いがあるんですよ。例えば、糸島の山田錦は素直で、大木町の山田錦は田舎娘というか素朴で安心感があるやさしい味わいとでもいいましょうか。旭菊の中でどれを最初に飲んだらいいかと聞かれたら、『綾花』をおすすめしています。『綾花』は大木町産の山田錦を使っていて、酵母は9号系。お酒を飲めない人にでもとっつきやすく、『綾花』を飲んで日本酒を好きになった方は多いですよ。スルスルっと入っていくようなお酒ですからね」

それにしても、お燗にしても、生酛仕込みにしても、酵母にしても、旭菊酒造は流行りにとらわれず自分たちが良いとするものをひたすら真っすぐに造り続けているという印象を受ける。

「当社では、新しいことをやる場合、未来よりも過去にさかのぼるという考え方です。日本酒にもその時々の流行りがあるのですが、流行に流されない酒造りをしたいと思っています。生酛仕込みは父が興味を持ち、2009年から造りはじめました。うちは昔ながらの酒造りを継承しています。流行に流されないがゆえに、逆に独自性を放っているかもしれません」と話す原田さんの言葉には実直さがにじみ出ている。

2018年「城島の酒蔵びらき」には、2日間で11万人

さて、話題は変わって「城島の酒蔵びらき」。「城島の酒蔵びらき」は今年で24回目を迎えた。あまりの人の多さに驚かされたのだが、これは間違いなく、福岡、九州はもとより、全国から人が集まる日本酒のイベントに成長しつつあるように感じた。

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「地元の人間としても、どうしてこんなになったんだという感じですよ。普段静かで何もない町に、2日間で訪れた人は11万人。西鉄の三潴駅が主要な交通機関なんですが、今年の利用客の数が今までの最高だという報告がありました。もともと1日だけの開催だったんですが、3年ほどまえから2日間開催になりました。この2日間だけは、いつも静かな城島の町が人であふれかえっている感じです。

蔵開きなどを通して、城島の認知度が高まればと思います。福岡といえば城島だよね。城島といえば日本酒だよねという風になっていってほしいですね」

食と酒が合わさり、さらなる美味しさを知った方は日本酒の魅力から離れない

旭菊酒造では、城島酒蔵開きに加え、単独の蔵開きも行っている。

「単独で行う蔵開きには、お世話になっている地酒専門店さんや飲食店さんなども足を運んでいただいてます。福岡の飲食店さんがバスを借りて、お客様を連れて来て下さいますし。最近では、名古屋の飲食店さんやその地域のお客様も一緒になっています。今までは福岡県内から来て下さるだけで十分だと思っていたのに、日本の各地域の方が来ていただける蔵になってきたのだと、しみじみ感じますね。

わざわざ足を運んでいただいてまで飲んでもらえるなんて、ありがたい限りです。旭菊を好むお客様は、食事もお酒も両方を楽しむ方が多いように感じます。食と酒が合わさり、さらなる美味しさを知った方は日本酒の魅力から離れない。飲食店さんは料理と酒の組み合わせをすごくよく考えられて提供されているので、すごく勉強になります。また燗つけの仕方も工夫されている方もいるんですよ。飲食店さんに行って気づかされることがたくさんあります。日本酒は本当に奥が深いので、自分もまだまだ。勉強している最中です」

施設名
旭菊酒造
住所
福岡県久留米市三潴町壱町原403
電話
0942-64-2003
URL
http://www.asahikiku.jp/72184/