宮崎県都城市。「黒霧島」「赤霧島」など、焼酎業界の雄、霧島酒造がその地にそびえ立つ。また畜産王国としてもその名を轟かせる。牛・豚・鶏産出額日本一である。それゆえに。そこに住む市民は焼肉屋、鳥料理屋など、飲食店への肉の質を求めるレベルが高い。中途半端な肉を提供するお店は即座に淘汰される。そんな激戦区である。
都城郊外にある「ぼっけもん」
もう通い始めて5年以上。ぼっけもんは、その激戦区で生き残り、日々鮮度抜群の鶏肉を提供している。お店を見渡すと笑顔に笑い声。テーブルに個室、楽しい宴が催され続けている。ぼっけもんの親会社エビス商事が手がける銘柄鶏、その名は霧島鶏。その味わいが筆者を含めたリピータに幾度も足を運ばせる。またぼっけもんで味わう料理もサービスも毎々、満足させられる。
ぼっけもんの意味。
ぼっけもんとは、南九州、鹿児島・宮崎あたりの方言で、勇気のある人、大胆な人という意味がある。常に新しいことに挑戦する。そんなお店を目指し、ぼっけもんと名付けている。
今日のサービスに満足しない。
店主黒木雄一は言う。彼はフランス、パリでギャルソンをしていた過去を持つ。「お客様のわがままをどこまで叶えられるか?」「お客様にどれだけわがままを言ってもらえるか?」それを成し遂げていくことがお店のサービスを進化させ、店のスタッフのレベルアップにもつながる。彼が目指す店作りは、まだ見ぬ世界が広がっているようだ。
ここからは料理を紹介していく。あくまでも筆者目線の紹介。
鳥刺し。
鶏を鳥刺しで食べられる幸せ。生で食べられる幸せ。非常にありがたい。甘い南九州の醤油に、おろし生姜で砂ズリを。わさびをつけてハツ刺しを。昆布締めも。白肝(しらきも・しろぎも)はごま油と塩で。この鶏を食べてしまうと、日常生活で味わう、これ以外の鶏肉に対して厳しい目を持ってしまう。
もうこれだけでいい。世の中草食系男子がどうのこうのと、言われているが、この鳥刺しが食べられないことは、もったいない。
塩ダレたたき。
そして塩ダレたたき。塩ダレとタタキと水菜と玉ねぎと。ただそれだけなのに。また食べたくなる。福岡西中洲にある喜家のじゃこねぎサラダと。ぼっけもんの塩ダレたたき。決してメインディッシュにはならない料理かも知れないが、必ず頼みたい一品である。
ぼっけもん焼に柚子胡椒。
メインとなる宮崎の地鶏の炭火焼と言われる定番の料理である。柚子胡椒が合う。これも鮮度がモノを言うのであろう。生でも食べられるものを炭火で香りを引き立てる。香りと鉄板の熱を帯びた音が、各々の宴に届けられる。視覚で楽しみ、嗅覚で楽しみ、味覚で楽しむ。それはお酒も進む。
チキンカツ南蛮。
隠れメニューである。脂っこい料理でなかなか頼みにくいなと思いがちだが、食べはじめると箸が止まらない。むしろ足らないんじゃないか?という葛藤が生まれるであろう。もともとは公式のメニューであったが、今は消えている。ただ頼んだら作ってもらえるときもある。ぜひ幻のメニュー。ご堪能あれ。
黄金スープを嗜む締めの前。
だいぶお腹も膨れる時間帯。締め前の逸品。黄金スープに麺を入れる。鶏ガラ100%のこのスープは、黄金色に光り輝きます。これもまた柚子胡椒が合います。ラーメンを食べたいわけではない。この黄金スープを飲むために麺をすする。沁み入る。寒い冬だけでなく、夏場も十分楽しめる味である。
最後の締めは、たかな巻。
もう入らない。が、これを食べないと始まらない。いや、終わらない。たかな巻。これがぼっけもんのたかな巻である。糖質制限している人間も、たらふく食べた人間も、普段は少食な人間も。皆、食べる。一人一皿食べきる。食べることで、血となり肉となり、明日へのみなぎるエナジーになる。お米がうまい。高菜がうまい。鶏もうまい。明日への血潮になる。
料理の共には日本酒を。
ぼっけもんのもう1つの魅力は、豊富な日本酒である。都城という土地柄圧倒的に飲まれるのは、焼酎である。店主黒木は屈しない男だ。その地で日本酒をしっかり揃えている。お客のわがままを叶えるために。キレのある日本酒も。芳醇爽快な日本酒も。ぼっけもんのメニュー、自慢の一皿に、しっかり合う。鳥と酒。マリアージュが成り立っている。宮崎の自慢の鶏料理を、全国津々浦々の日本酒とあてて。楽しい夜、美味しい料理は、明日を元気にしていく。また次行くときに、また新しいぼっけもんが待っている。
今宵、おかえりなさいと。ただいま、ぼっけもん。
店主 黒木雄一氏。日本酒の目利きでもある。
昔の写真。今も昔もきちんとテイスティングされて、出される日本酒は多岐にわたる。
芳醇爽快なものから、ど辛口まで。振れ幅も広い。九州では珍しい八海山の貴醸酒もある。
これが噂のチキンカツ南蛮。
最近のおすすめ。ハツのタレ焼き。鮮度が高いものを贅沢にタレ。
最後は唐揚げ。これも美味しい。人数少ないときに唐揚げか?チキンカツ南蛮か?ぼっけもん焼きか?悩みどころ。