山廃の酒 美田

山廃純米 美田 九州ではじめに山廃を復活したみいの寿

みいの寿といったら、純米酒へのこだわりは並みならぬものがある。それに加え、2018年第7回福岡県酒類鑑評会では福岡県知事賞や福岡県議会議長賞を受賞するなど、高い技術力を誇る。

2018年第7回福岡県酒類鑑評会での主な受賞歴。記事はこちら

  • 純米大吟醸の部・福岡県知事賞:三井の寿 純米大吟醸 斗瓶採り(みいの寿)
  • 大吟醸の部福岡県知事賞:三井の寿 大吟醸 厳寒手造り(みいの寿)
  • 純米吟醸酒・純米酒の部(精米歩合51~59%)福岡県議会議長賞:三井の寿 純米吟醸 芳吟(みいの寿)
  • 純米吟醸酒・純米酒の部(精米歩合60%以上)福岡県議会議長賞:三井の寿 純米吟醸 山田錦60 バトナ―ジュ(みいの寿)

戦後、九州で一番に山廃を復活させたのは、みいの寿だ。石川県にある菊姫さんから来た杜氏が山廃が得意だったので造りはじめたとのこと。九州では山廃を造れる杜氏さんがいなかったので、いろんな蔵の50代、60代のベテラン杜氏さんたちが『教えてほしい』とよく見学に来ていたそうだ。みいの寿の記事はこちら

山廃仕込みは、自然界に存在する乳酸菌を利用する生酛(きもと)系の酒母造り

生酛造りは、最も伝統的とされる酵母造りの技法のことで、江戸時代に確立された仕込み方法だ。蔵内に浮遊している天然の乳酸菌や酵母菌を取り込み、ゆっくり発酵させる。まず、桶の中で米麹をすり潰す「山おろし」という作業を行う。「山おろし」は、蒸し米、米麹、水を合わせて、少量ずつ桶に入れ、櫂棒ですり潰す。この作業に2日間かかり、その後タンクに入れて、約30日間で酒母が完成する。最近、この生酛造りに注目し、手掛ける蔵元が増えつつある。明治末期までは、どこの蔵も生酛造りで酒を造っていた。その後、明治42(1909)年に山廃酛、明治43(1910)年に速醸酛が開発されると生酛造りをする蔵はほとんどなくなってしまったそうだ。現在、大半の蔵は速醸酛で酒を造る。

山廃仕込みとは、生酛造りの中にある最も重労働とされる「山おろし」を省いた方法。山おろし廃止という意味から「山廃」と呼ばれるようになった。まず、米麹と水を混ぜて水麹をつくりタンクに入れて、その後、蒸米を加え、約30日で酒母ができあがる。速醸酛は、米麹、水、乳酸、酵母で水麹をつくりタンクに入れて、その後、蒸米を加える。山廃や生酛の半分の日数である約15日で酒母が完成する。

みいの寿「山廃純米 豊醸 美田」と「大辛口+14 山廃純米 辛醸 美田」を飲み比べ

みいの寿の蔵の中に棲みついている乳酸菌を育て、生酛系山廃造りの手法で酵母を作り上げたそうだ。

「山廃純米 豊醸 美田」糸島産山田錦使用。精米歩合70%

「大辛口+14 山廃純米 辛醸 美田」糸島産山田錦使用。精米歩合70%。日本酒度+14の大辛口。「山廃を酸っぱいと思っている人が多いのですが、これは山廃嫌いの人でも好んで飲んでいただいています。うちの山廃の技術力がわかるのですが、純米で日本酒度プラス14はなかなか切れません」とみいの寿の井上さん。

常温でいただいてみた。まず、「山廃純米 豊醸 美田」。香りは山廃ならではの独特の香り。どっしりとした輪郭で、酸味の後に、まろやかな甘みがほんのりと。「大辛口+14 山廃純米 辛醸 美田」は、豊醸より香りはないものの、口に含むと酸味にキレがあり、飲みやすい。辛いというよりキレるイメージ。同じ山廃でも個性が全く異なる。どちらも旨味がしっかりあり重厚な旨みというか豊かさを感じる。みいの寿の酒は、どれを飲んでも(というほどいろんな銘柄を飲んではいないが)、ふくよかというか層が厚いというか。口に入れた瞬間、幾重もの旨さの厚みが感じられ、心がじんわりと満たされていく。これが、技術とセンスの証なのだろうか。

 

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