博多の日本酒がすべてそろう酒屋
友添本店代表取締役 友添健二さん
福岡県の地酒消費率は50%以下という。博多や天神の居酒屋に入っても、新潟や秋田など他県の日本酒はあっても、福岡の清酒に巡り会えないことは多々ある。あまりにも地元の酒が軽んじられているのではないか。そんな疑問がわいていた。
世界チャンピオンに輝いた喜多屋の「大吟醸 極醸 喜多屋」があるし、高橋商店の「繁桝」もおいしい。白糸酒造の「田中六五」は大人気で手に入りにくいし、ことしの後藤酒造場の「藤娘」はうまいと酒蔵関係者に評判だ。ほかにも、清酒造りに情熱を傾ける蔵は、福岡県内にはたくさんある。
なのに、福岡の人は地酒をなぜ飲まない? 福岡の飲食店にはなぜ地酒が置いてない?
「福岡県内70蔵元のお酒がすべて揃う店」を掲げる酒屋、友添本店(福岡市中央区春吉)の友添健二さんに、疑問をぶつけてみた。
地酒はお客が店に来る動機に
福岡の日本酒が圧倒的人気
ー友添本店は福岡の地酒を応援するようになったきっかけとは?
友添さん お客さんがお店に来る動機になるのではないかと思ったのです。「福岡県の酒は全部ありますよ」とうたっていれば、お客さんもわかりやすいじゃないですか。世の中の飲食店に大手の酒造会社の酒ばかりが並ぶようになったら、小さな蔵だけでなく、私の酒屋もなくなると思います。ディスカウント店と価格競争にもなりますから。どこかで尖って、「私たちはここにいるぞ」とアピールしないといけない。
幸いなことに、福岡には胸を張ってアピールできる酒蔵がたくさんあります。友添本店は他県の酒も、ワイン、ウイスキーなども置いていますが、お客さんには圧倒的に福岡の地酒が選ばれています。わざわざ、友添本店まで足を運んで、福岡の日本酒・焼酎を探しに来られる人がいるんです。
福岡で福岡の酒が売れないと蔵の繁栄なし
全蔵元の酒入手ルートを開拓
ーなぜ福岡の地酒消費率が低いと思いますか?
友添さん 各蔵によって流通がバラバラ。これでは横の広がりが生まれません。以前は福岡全酒蔵の酒を卸してもらえる流通ルートがなかった。だから、私は問屋さんに頼んでルートをつくってもらい、福岡すべての蔵の酒を並べることができるようになりました。私たちのルートを使ってもらってもいい。福岡の地酒が買える店がどんどん増えてくれたら、素晴らしいことだと思っています。私は福岡で福岡の酒が売れないと、福岡の酒蔵の永続的な繁栄はないと思っていますから。
「晴酒はしご」という私たちの地元春吉など飲食店と福岡の酒蔵のコラボイベントが5月20日~27日にあります。私も実行委員会に入ってます。中にはこれまで地酒を置いてなかった飲食店もあって、イベントをきっかけに福岡の地酒が広まっていったらいいなと思っています。
感情を揺さぶる地酒
うまい、まずいで表現できない酒
ー友添さんにとって地酒とは何ですか?
友添さん 私の母校の春吉小学校に子供が入学したとき、校歌を歌ってみせたんです。とっても、久しぶりの校歌。そしたら、涙が目からどんどんあふれてきて。母校への思い出なんでしょうか。自分中で眠っていた感情にびっくりしたんです。
私は地酒も同じようなものなのだろう、と思います。例えば東京に出て、久しぶりに故郷に帰って来て飲む地元の酒。「これ、これ!」と心を揺さぶります。地酒って、うまい、まずいなどの感覚では表現できない味わいなんです。
友添本店
福岡市中央区春吉2丁目11-18
092-761-6027
福岡の地酒だけでなく、全国の日本酒、焼酎の品ぞろえも豊富。すべて1本から定価で購入できるのがうれしい。
「第3回晴酒はしご」
5月20日~27日、福岡市中央区の「晴好エリア」の飲食店31店と福岡の17蔵元がコラボ。各店が500円で料理1品、お酒1杯が楽しめる「晴酒セット」を用意しており、“はしご酒”を楽しめる。期間中は蔵元が来店する店舗もあり、酒造りを直接聞くこともできる。問い合わせは、晴好実行委員会(092-761-6027)へ。