比翼鶴酒造

味わい深く、飲み飽きない。城島の酒を代表する比翼鶴。

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「城島の酒」を代表する酒蔵の一つ、比翼鶴酒造(福岡県久留米市城島町)は、筑後川支流の山ノ井川に面している。周辺には田畑も広がり、5月の快晴の日、黄金色に色づいた麦の稲穂が、強い日差しを受けてさらに輝きを増した。美しい風景に蔵が溶け込んでいる。

武士出身の家系から誕生した比翼鶴

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1895年(明治28年)創業。比翼鶴酒造を経営する二ノ宮家は、士族の家系である。“侍の酒”と聞くと、刀でスパッと切ったようなあっさり目の味を想像するが、代表銘柄の清酒「比翼鶴」はどっしりとした味わい。なぜなら、地元の人たちの晩酌を想定しているからだ。

鎌倉将軍から贈られた「比翼鶴」の紋

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蔵の跡取りで、酒造りの現場責任者である、常務の二ノ宮啓輔さんは、先祖の研究がライフワークという。「士族出身で良かったのは、家系図が残っていることですかね」。歴史マニアらしく、自らホワイトボードに家系図を書いて、二ノ宮家のことについて説明し始めた。

「比翼鶴」という蔵の名前は、先祖の家紋から来ている。かつて柳川の地を治めたこともある先祖の蒲地氏が、鎌倉将軍からもらった紋という。二ノ宮家の家系図をたどっていくと、平安時代まで続くというから、驚きだ。

腰が低くて和傘もつくる比翼鶴の跡取り

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そんな武士の末裔は、全然偉ぶらない。腰が低い。日本大学農獣医学部で古代米の研究をし、東京農業大学で醸造を学んだ。どこか研究者っぽい風貌であるが、モノづくりは大好き。城島に400年伝わる「城島和傘保存会」の会員で、蔵の敷地の小屋を開放し、酒造りの傍ら和傘づくりも行っている。

伝統文化が大好きな比翼鶴の親子

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「最近では比翼鶴よりも、和傘の取材が多くて、ちょっと複雑です」と啓輔さんは苦笑い。ただ、「45歳の私が、城島和傘保存会の最年少。伝統の継承は大事なので、酒造りを引退したら、和傘づくりをして余生を過ごしたいなんて考えたりしますよ」と話す。父で社長の啓克さんも、「能」の謡教士。伝統文化を大切にしているところが、士族出身らしく感じる。

比翼鶴は麹にこだわり

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啓輔さんに酒造りで大事にしていることを聞くと、すぐに「麹をしっかりつくること」と力強い声が返ってきた。麹を丁寧につくることで、味がしっかりし、品質も劣化せず、コシの強い酒になるという。「比翼鶴の酒は、味の濃い料理でも受け止めてくれると、地元の人にも好評です」

大学で米や微生物の研究してきただけに、麹米には強いこだわりを持つ。地元筑後で栽培される酒米「吟のさと」をレギュラー酒で使う。酒米の王者と言われる「山田錦」を改良した米だけに高価だが、「使いやすい」と導入を決めた。

精米場を備え、コスパ抜群の比翼鶴の酒

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ただ、酒造りに高価な原材料を使っているけど、「比翼鶴」のコストパフォーマンスは良いという。「同じ品質の日本酒が並んでいたとしたら、価格には自信があります」と啓輔さんは胸を張る。理由の一つが、原料米の自社精米。敷地に精米場を備え、酒米を玄米で仕入れて、米を磨いている。精米された酒米を仕入れる蔵が多い中、自ら精米を行うことでコストが抑えられるという。

地下200メートル、美しいの水で醸される比翼鶴の酒

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蔵に浄水場もあって、地下200メートルから汲み上げる良質な筑後川の伏流水で醸される、比翼鶴の酒。すばらしい素材に恵まれた商品を、コストを抑えて提供するのは、これまで蔵を支えてくれた地元の人たちに、毎日でも飲んでもらいたいから。

水のごとく喉を通る清酒、比翼鶴

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社長の啓克さんは「私は、『酒は水のごとく喉を通らないといけない』と言われ続けてきました。もちろん、味わいがあって、喉を通り過ぎる酒だと理解しています。それが、比翼鶴の酒です」と力を込めた。

これからも、城島の地にしっかりと足を付け、味わい深くて飲み飽きしない酒を造り続ける。

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施設名
比翼鶴酒造
住所
福岡県久留米市城島町内野466-1
電話
0942-62-2171
URL
https://www.hiyokutsuru.co.jp/
その他
酒米の精米歩合は70%、55%、40%の3パターン。「比翼鶴」銘柄は、味わい深い本醸造酒・純米酒から香り高い純米大吟醸酒まで、さまざまなシーンで楽しめる酒をラインナップ。特別純米「邪馬寒梅」は、しっかりした味わいで食中酒として人気。麦焼酎「麦シャッパ」など本格焼酎も製造・販売している。
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