幻の酒米・雄町の酒は、米の甘みが口いっぱいに広がり、深いコクと丸みのある旨味がいつまでも口に残る
美味しい日本酒を手に入れたといただいたのが、「喜多屋 純米吟醸 雄町100%使用」。最近、日本酒好きからよく聞くのが「雄町」の名。実際、山田錦の酒と飲み比べてみると、米の甘みというかふくよかな旨みというか、とにかく飲みやすいのである。雄町とは、いったいどんな酒米なのか。
今から約150年前に岡山で生まれた雄町は、酒米のルーツと言われる。山田錦は雄町を親に持つ
雄町は、江戸時代末期に誕生。今から約150年前、現在の岡山市雄町の高島地区に暮らす岸本甚造さんが、伯耆大山(ほうきだいせん)に参拝した帰り道に発見した変わり穂が雄町の源となった。この変わり穂を二本持ち帰り、試行錯誤のうえ生み出した新種が二本草。この酒米・二本草が旨い酒を醸すと評判で、近隣で栽培されるようになり、地名の雄町から雄町米と呼ばれるようになったそうだ。混血のない米で、酒米のルーツとも言われている。山田錦も、この雄町を交配して生まれた。
雄町の特徴は、背丈が160センチ以上と高く、大粒で、球状の心白を持つ。栽培が難しいため、発祥の地である岡山を中心に栽培されている。なかなか手に入りにくい希少な酒米だ。軟らかく溶けやすい酒米として知られ、同じ精米歩合で同じ製法の山田錦と飲み比べると、その味わいの違いがよりわかる。
福岡の蔵元で、雄町を使った日本酒3種をご紹介。
高橋商店で知られる繁桝 雄町特別純米酒 可也
山田錦の産地で知られる福岡県糸島で栽培された雄町使用。可也(かや)は、糸島を象徴する山である可也山(別名は糸島富士)から名づいたのではと想像する。精米歩合60%。アルコール度数16度以上17度未満。後日紹介予定の酒屋さんは、繁桝の中でもこの雄町の可也が旨いと勧めてくれた。
山の壽 JAPANESE SAKE YAMANOKOTOBUKI 雄町 ver.
雄町使用。アルコール度数16度。辛口クールな酒で社長の片山さん曰く「雄町を使ったお酒で、とてもクールな仕上がり。どちらというと辛口で、酸もきっちりあってスパッとしていて飲みやすいタイプ。サッパリと飲みたい方におすすめです」とのことだ。香りは、先ほどの山田錦を使った特別純米酒に比べると、甘酸っぱいフルーツの香り。ほどよい酸が全体を引き締め、旨味が口の中に広がる。「岡山で作られている雄町米は、一番いい部分の幅が狭いとよく言われます。そこをうまく引き出すのに、とても神経を使います。雄町米は希少なので、3年先まで予約を入れています」。
喜多屋 純米吟醸 喜多屋 雄町100%使用
精米歩合60%。やや辛口クールで芳醇な酒。フルーティーな香りで、しっかりとしたコクがある。キレの良い酸味が調和した力強い味わい。購入はこちらから。
これから、もっと雄町を使う蔵元が増える気がする。楽しみに待ちたい。