千年乃松酒蔵

めでたい名前の「ちとせのまつ」

福岡県久留米市の山口酒造場から歩いてすぐ、千年乃松酒造へ到着した。

もともと住まいにしていたという、明治時代に旅館を移築したという古民家は、現在デイケア施設になっている。その奥に千年乃松酒造の蔵があるのだが、今回はお願いして、デイケア施設を通り抜けさせていただいた。当時使われていたままの姿の階段箪笥やかまどなどを見ると、古き良き暮らしを彷彿とさせる。

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その一角に、年季の入った角樽を見つけた。

風情ある角樽は、婚礼用に「一生つれそう」と一升入りを、商人向けには「商売繁盛」と半升入りが使われる

角樽は、もともと柳樽と呼ばれ、柳の木が使われていた。柳が杉に代わり、江戸時代の文化文政のころ、日本独特の形をした角樽が生まれたと言われている。特に、朱塗りの角樽は、婚礼や結納などおめでたい席で使われる。婚礼用には「一生つれそう」と一升入りを、商人向けには「商売繁盛」と半升入りが使われるそうだ。

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筑後川のコスモス街道沿いにある酒蔵

蔵は、筑後川沿いにある。しかもコスモス街道沿いということで、10月になるとコスモスの花が咲き乱れ、それが4キロほど続くという。「コスモス見がてら、蔵に立ち寄ってくださるお客様も多いですね」と代表取締役社長の田中吉政さん。「うちは限定品が多いので、基本的には蔵のみで販売しています。お客様が直接買いに来て下さることが多いですね。昔は、久留米市北野町に酒蔵は5、6軒あったのですが、今は3軒になってしまいました」。その3軒が、山口酒造場、千年乃松酒造、山の壽酒造だ。

千年乃松(ちとせのまつ)酒造の由来はというと、筑後高良山付近一帯の住民は昔から、筑後川のことを千歳川と呼んでいたそうだ。筑後平野を潤してくれる筑後川。五穀を豊かに実らしながら千年も万年も長生きしたいとの人間の願望を「千歳」という名に託しているとか。また、耳納山系の永遠に変わらない「松の緑」をめでたいとし、それらを合せて、千歳乃松と名付けたと言い伝えられているそうだ(戦後千歳乃松と字を改めた)。

現在、千年乃松酒造はスレート小屋になっているのだが、昔はもちろん土蔵であった。平成3年の台風で、煙突が倒れ、土蔵がやられてしまったそうだ。当時の最大瞬間風速は約60~70m/s。電柱もなぎ倒されたとのことで、相当な被害だったようだ。

福岡の米と酵母で造った発泡純米酒、D-ONE

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おすすめのお酒を聞いてみると、こちらですと出してくれたのが、「発泡純米酒D-ONE」。福岡県工業技術センターが開発したふくおか夢酵母を使用し、20年ほど前からある酒だ。「福岡県工業技術センターが新しい酵母を作ったので、試作で新しい酒を造ってみましょうという話から生まれました。米は福岡県産の夢一献、精米歩合は60%。福岡の米と酵母で造った発泡純米酒です。リンゴ酸の酵母が強い酒なので、香りがリンゴというわけではないのですが、飲んでみると甘酸っぱくて、ほのかにリンゴのような味わいがあります」と田中社長。さらに、「温度が高いと吹き出してしまうので、キンキンに冷やしてから、飲んでくださいね。フタを開けて吹き出しそうになったら、いったん閉めてガス抜きをしてください」。アルコール度数は、6度以上7度未満。

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フルーツを感じる爽やかな酸味と米麹のほどよい甘さ。

ということで、家に持ち帰り早速飲んでみた。田中社長の言う通り、キンキンに冷やしたものの、フタを開けると吹き出しそうになり、ガス抜きをすること3度ほど。落ち着いたところで、グラスに注ぐとシュワシュワシュワと。目にも涼しい。飲んでみると、フルーツを感じる爽やかな酸味を含むほどよい甘さで軽い。シュワシュワな炭酸がのど越しよく、後味はスッキリ。日本酒好きの友達曰く「日本酒というより、まるでシャンパンみたい。ちょっと驚き!香りもフルーティーで飲み口が軽やかですごく飲みやすい。こういうお酒は女性が好き」とのこと。アルコール度数が低いこともあるが、とにかく飲みやすい。

こちらは、生滓酒。

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もろみを搾ったままのとりたてのまだ白濁した活性酒を製品にした、昔懐かしい生の原酒。精米歩合は70%、アルコール度数は17度。見た目は粒感が残っているが、飲んでみるとさほど気にならない。にごり酒というよりも、独特の風味のあるどぶろくに近い香りや味わいを感じた。が、どぶろくに比べると随分と飲みやすい。余談だが、どぶろくと言えば、どぶろく特区(地域経済活性化を目的に導入された構造改革特区の一つ)があり、特区内であれば、農家などが醸造所を作ることができ、自家製米で仕込んだどぶろくを製造し販売することが可能となった。

「不在にしていることもあるので、蔵に買いに来るときは、お電話いただいたほうが確実です」と田中社長。ふらりと蔵元に行き、話を聞きながらお酒を選ぶのは楽しいものだ。

施設名
千年乃松酒造
住所
福岡県久留米市北野町今山370-1
電話
0942-78-3003 
URL
http://www.chitosenomatu.jp/index.html
その他
※不在の場合もあるため、蔵に行く場合は事前に電話を
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