「駿」や「吟醸生酒」で知られる「いそのさわ」。「いそのさわ」のある福岡県うきは市は、全世帯が井戸または山水を利用するほど水に恵まれ、果物の生産が盛ん
果物の生産が盛んで、フルーツの里として知られる福岡県うきは市にある酒蔵が「いそのさわ」だ。名水100選、棚田100選に選出されるほど自然豊かで、全世帯が井戸または山水を利用するほど水に恵まれているというから驚きだ。
「いそのさわ」の創業は、明治26(1893)年。社名である「いそのさわ」は、創業者である髙木喜三郎さんの父「いそきち」さんと母「さわ」さんから名付けられた。創業時の生産量は250石から300石(1石=10斗=180リットル。一升瓶100本分)で、久留米・三井・朝倉・日田に馬車で輸送していたという。明治40年になると福岡・筑豊に進出し、1200石を超えていたそうだ。現在の製造量は年間で4000石ほど。
「うきは市では唯一の日本酒蔵となりました。今年で125週年を迎えますが、まだまだ発展途上。これからは、もっと地元に根差した酒造りをしていきたいと考えています」と話すのは、社長室所属で、「いそのさわ」の後継者である髙木亮三朗さん。
「私が蔵に入りやっと1年が過ぎました。うきは市で暮らすのは初めてですので、浮羽の自然やのどかさがとても新鮮です。」と髙木さんは話す。
「いそのさわ」では、ひと昔前は普通酒をメインに製造していたという。もちろん鑑評会に出すようなお酒も造っていたが、それよりもリーズナブルなパック酒に力を入れていた時代があり、大量生産し全国で流通していた。
「駿」は、2017年10月からブランドリニューアル。種類をしぼり純米酒系の特定名称酒をメインに
「今は昔ほど、量を多く造っていないので、地元福岡で愛されるお酒を目指しています。いいお酒を造って、地元である福岡で飲んでいただきたい。これからは、大吟醸、純米米大吟醸など特定名称酒などを今以上にしっかり造っていく体制になりつつあります。
銘柄『駿』は20年ほど前からある限定流通ブランドなんですが、2017年10月からブランドリニューアルを行っています。いろいろな商品を展開し過ぎてしまったので、純米系統の特定名称酒をメインに季節商品を造っていきます。たくさんの商品を造るより、純米酒に絞り同じお米で同じお酒を何度も造ることで技術の研鑽にもなります。『駿』は、全国厳選の山田錦を使い、酵母は9号系。搾りにはやぶたを使いますが、お酒の味を見つつ極力自然圧を心がけています。香りは抑え気味。お米の味がしっかりとするお酒です。食事を楽しみながら味わえる食中酒として飲んでいただければと思います」。
蔵開きの時にいただいたワインのようなラベルで、米の甘みが強く感じられたのが「吟醸生酒」。山田錦60%使用で、女性にも大変飲みやすいと好評であった。
「吟醸生酒」は、吟醸香を楽しめるようワイングラスで飲んでいただきたいので、あえてワインのようなラベルにしたそうだ。
「父は、あと10年ぐらいは社長として蔵を引っ張っていきます。僕の理想は、まず若い人にもっと日本酒を飲んでもらいたい。そして、できるだけ地元のものを使ってお酒造りをやっていきたい。今は、米とかまだまだです。うきは市には、これだけ田んぼがあるので、少しずつでも地元の米を増やしていきたい。将来的には全量地元産が理想です」と話す髙木さんの言葉から、「いそのさわ」の未来が垣間見えた。
先代からしっかりとした地盤を受け継ぎ、水と米とフルーツに恵まれた福岡県うきは市、そして「いそのさわ」ならではの酒造り。これからが楽しみだ。
- 施設名
- いそのさわ
- 住所
- 福岡県うきは市浮羽町西隈上1−2
- 電話
- 0943-77-3103
- URL
- http://www.isonosawa.jp/