寒北斗酒造

嘉穂劇場近くの酒蔵へ。

せっかく嘉穂劇場まで来たので、近くの酒蔵へ足を延ばしてみた。嘉穂劇場から車で10分ちょっとのところにあるのが、瑞穂菊酒造だ。

取材日(日曜日)は、休みだったのだが、近くの直売所で瑞穂菊酒造の気になるお酒があったので、手に入れた。

そのお酒が、「一鳥万宝(いっちょうまんぽう)」。

何か気になるかというと、アイガモ農法無農薬栽培米を使用しているのだ。しかも、その生産者は、アイガモ農法で知られる古野隆雄さんらによるものであった。

古野隆雄さんといったら、福岡県桂川町で完全無農薬有機栽培に取り組み、アイガモ除草法を発展的に技術体系化した「アイガモ水稲同時栽培」を確立した人物。アイガモ農法は、アイガモを水田に放して害虫や雑草を食べてもらい、さらにその糞は稲の養分となり、最後にアイガモは食料となる無駄のない農法で、日本のみならず世界でも実践されている。本棚に、10年以上前に発行された「九州のムラ」という雑誌が残っていた。ちなみに、この時、私は、種の自家採取を行い野菜を栽培する、長崎県の岩崎政利さんを取材させていただいた。九州の農の奥深い世界にすっかり魅了され、これらを広く伝えていきたいと強く思った。

若かりし懐かしい記憶が甦る。日本酒も米あってのお酒。農業とは切っても切り離せない。

懐かしい余韻に浸りながら、車を走らす。約15分のところに梅ケ谷酒造(休み)があり、通り過ぎしばらくすると、寒北斗酒造が見えた。

寒北斗酒造は、享保14年(1729年)創業した。創業当時の名は、玉の井酒造。玉の井という言葉は、よい水の出る井戸を意味するのだが、その名の通り、英彦山系の雄峰・馬見山の湧き水を集める嘉麻川の伏流水を屋敷内の2つの井戸から汲み上げていた。酒造りに欠かせないこの水、井戸への感謝の想いから名付けられたそうだ。

昭和59(1984)年、福岡らしい酒を追求し生まれた酒が「寒北斗」。

「寒北斗」は、すぐ近くにある、北斗七星を信仰する「北斗宮」という神社が名前の由来だそうだ。この酒が看板商品となり、平成23(2011)年に社名を寒北斗酒造へ変更した。

見るからに立派な佇まいの酒蔵で、中に入ってみると、天井は高く、重厚な太い梁が幾重にも重なる。右手には賞状がずらりと並び、昔ながらの懐かしい雰囲気を残しつつも、どこか背筋が伸びるような凛とした空気を感じた。

入って左手には直売所があり、どれにしようかと迷っていたところ、「黄金比率30 VISION」というチラシが目に入った。酒米としては最古の品種として知られ、山田錦や五百万石のルーツとなっている「雄町」と「山田錦」と福岡県の酒米「夢一献」を併せ持つ「壽限無」を黄金比率に基づく特別調合で仕上げた限定品とのこと。

「黄金比率30 VISION」は、「寒北斗」の生誕30周年を記念して、平成27年(2015年)からはじまった「寒北斗30VISION」プロジェクトの中で生まれた酒だ。「30年後の還暦にも、福岡で一番美味しい酒」、そして、福岡で愛される「福岡の銘酒」であり続けるために、毎年、若手蔵人が新しい酒にチャレンジしている。印象的なラベルのイラストは、スタッフの手描きだそうだ。「黄金比率30 VISION」は蔵では買えないので、近くの酒屋を紹介していただき、購入した。

この「黄金比率30 VISION」、地元にあるがやがや門(九大と地域の交流拠点)で飲み会があった時に持ち込んだのだが、ちょっと話をしているうちに、あっという間に空になっていた。

この時は、30、40代の地元の若手農家の参加が多かったのだが、話題となったのは、地元「元岡(もとおか)」のブランドづくり。糸島市のすぐ隣にある福岡市西区元岡は、九大の移転地なのだが、隣の糸島市に比べて、知名度が低い。若手農家たちは、新しい品種、流通など多面的に元岡ブランドをつくろうと意気込んでいた。

寒北斗酒造が、「寒北斗」を造った時、遠くではなくまずは地元に愛される酒をと足元を見つめ直し、その結果、今があるのであれば、元岡の若手農家たちも、地元のために今切磋琢磨していることは、きっとこの先、何だかのカタチで実を結ぶと信じたい。それにしても、「黄金比率30 VISION」をひと口でいいから飲みたかった。年が明けたら、蔵見学をさせていただく予定なので、その時こそ、とっておきのお酒を手に入れたい。

施設名
寒北斗酒造
住所
福岡県嘉麻市大隈町1036−1
電話
0948-57-0009
URL
http://kanhokuto.com/
営業時間
9時~17時
定休日
1月1~3日