翁酒造

眼医者が全国的に有名だった須恵町で、宿屋を営む。そこで、どぶろくを造りはじめたのが、酒蔵のはじまり

1763年(宝暦13年)に創業した翁酒造は、福岡県粕屋郡須恵町で創業した。

「当時、須恵町には眼医者がたくさんあり、治療を受けるため、全国からたくさんの人々が須恵町を訪れていたそうです。そこで宿屋を営んでいて、どぶろくを造り宿で提供していたのが、酒屋のはじまりです。当時の屋号は升屋。大正2年に会社組織になり、安河内という姓を取って、安河内合名会社になりました。ここ古賀に移転したのは、約65年前です」と話すのは、翁酒造代表取締役社長の安河内重人さんだ。

甲類焼酎は、かつて航空燃料として使われていた

古賀に来たのは、甲類焼酎(連続式蒸留焼酎)の設備や免許を譲り受けたため。移転と同時に、翁酒造と名を変えた。いつも翁の面のついた帯をつけていた名物おばあさんから名が付いたそうだ。

「甲類焼酎は、もともと航空燃料として使われていたんですよ。うちが持っている甲類焼酎の免許は、麦焼酎とか芋焼酎など飲む類の焼酎ではなく、蒸留して96~97%に純度を上げていく焼酎の免許。甲類焼酎の設備や免許を国から払い下げて、民間から酒税として徴収しようとしていたところ、税務署の人と懇意にしていた祖父に声がかかって、設備を譲り受けたようです。

甲類焼酎の設備は、全国に100あるかないかだと思います。設備の近くには、空港があったはず。戦時中そこから出撃が行われ、基地になっていたようです。うちの甲類焼酎も、移転当時はほぼ燃料用で。今はありませんが、3階建てぐらいのそれはもう大きな蒸留器で甲類焼酎を造っていたんですよ。懐かしいですね」。

やがて、製鉄所がさかんな北九州で、角打ち向けに甲類焼酎を販売

「1960年代、北九州は、八幡製鉄所をはじめ鉄の生産が盛んでした。製鉄所は24時間稼働で、3交代勤務。働いている人たちは、勤務帰りに角打ちのカウンターで焼酎を飲む人が多く、焼酎の需要が高い時代でした。ならば、甲類焼酎を売ろうということになり、もちろん飲料用の甲類焼酎を、北九州メインで販売するようになりました。

ここ近年は、量より質の時代に変わりつつあります。それに最近では、健康に配慮したものが好まれる傾向もあるようです」。

田植えから行う酒造り。純米大吟醸・稲田重造は年間2000本の限定品

翁酒造では、現在、焼酎、日本酒、リキュールを取り扱っている。なかでも、地元の知り合いの農家と米造りから行っているのが、「純米大吟醸 稲田重造」だ。

「よく『稲田重造』ってどなたなんですか?と聞かれるのですが、単なる当て字です(笑)。私が重人という名前で、“稲”と“田”んぼを“重”人が“造”ってる。それで、『稲田重造』。田植えから稲刈りまで、地元の百姓と一緒にやっています。

普通、酒屋は田植えはやらないのですが、地元の同級生が百姓をやっていて、米を造ってみないかという話があって、一緒に造りはじめました。耕作放棄地がどんどん増えているので、休耕田に酒米造ったらどうかという話なんかも出ています。ただ、山田錦は、造るのが難しいですね。一反の低農薬田からの収穫は、わずか6俵。仲間と作った米を自然乾燥させ、40パーセント磨き、地元の井戸水で造った純米大吟醸。醪は、ネル製の袋に吊るし、自然に滲み出てくる雫を集めています。味はすっきりとしていて、香りもほどよく、米のうま味が感じられますよ。年間2000本の限定品になります」。

昨年11月ごろから甘酒人気が高まり、製造が間に合わない

発酵食品が身体にいいというのは周知の事実。最近、スーパーやドラッグストアなどでも甘酒はよく目にするが、そこまでの人気だとは、知らなかった。

「最近は、甘酒がずっと不足状態。造ったら、次から次になくなってしまいます。1度に造れる量は、700~800本。甘酒がこんなにも売れ出したのは、昨年の11月ぐらいから。昨年の夏からじわじわと売れはじめ、11月からどーんと売れるようになりました。

週に精一杯作って2回ですね。米蒸して麹作って準備に3日、1晩仕込んで瓶詰めします。今、毎朝3時起きですよ。酒米と食用米で何度も試してみたのですが、食用米のほうが旨味が残る気がして。うちは食用米で造っています。うちの甘酒の特長は、見ての通り、麹が多いところ。甘酒は、お通じや暑い中の食欲不振などに優れもの。昔は、発酵食品をもっと暮らしに取り入れていたので、これからも飲み続けてほしいですね。

酒の仕込みがはじまると、酒と甘酒のスケジュールを組むのが大変です。冬から春は土日なし。甘酒に貢献してもらっているので、設備を入れて伸ばしたいという思いもあります」。

実際に、甘酒を頂いてみると、米麹の粒感がしっかりと残り、米そのものの甘味がストレートに感じられる素朴で優しい味わい。疲れた時、食欲不振な時、お通じが気になる時など、ぜひ、飲む点滴と言われるほど栄養価が高い甘酒を。身体が元気になること間違いなしだ。

施設名
翁酒造
住所
福岡県古賀市花見南3-19-1
電話
092-944-0551
URL
http://okinashuzou.jp/
営業時間
9時~17時
定休日
土日、祝日