不屈の篠崎〜1〜

豪雨の壊滅的被害を乗り越える酒蔵

再起の酒造りを追うシリーズ第1回

吟醸香,篠崎,甘酒,国菊,日本酒,九州北部豪雨

浸水した篠崎の工場。写真はいずれも篠崎の梅野尚平さん提供。

多くの人的・物的被害をもたらした九州北部豪雨から4ヶ月。福岡県朝倉市の「篠崎」で11月1日、例年よりも2ヶ月ほど遅れて日本酒の仕込みが始まった。感慨深げな表情の蔵人たちの姿が、仕込みの部屋にはあった。

7月5日~6日にかけての豪雨は、すさまじかった。篠崎のすぐそばを流れる桂川がみるみるうちに増水した。社員らが土嚢を積み上げて、浸水に備えるが、無駄だった。瞬く間に濁流が工場に押し寄せる。大人の腰まで浸かる茶色く濁った水が、工場内を埋め尽くした。大量の土砂も流れ込んだ。

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当時の様子(動画)

6億円の被害

酒をつくるための多くの機械が水に浸かって、使い物にならなくなった。機械に2億円の被害。今や会社の売上の大半を占める「国菊」ブランドの甘酒も、つくれなくなった。全国トップを誇る甘酒の生産ラインは、2ヶ月に渡ってストップ。9月まで出荷を再開できず、機械などの被害を合わせると、単純計算で、6億円もの損害が出たことになる。第2の稼ぎ頭である本格焼酎は、11月の時点でまだ製造を再開していない。

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工場に甚大な被害を受け、国菊の甘酒や焼酎などの酒の製造はストップしたけれど、社員、パートを含めてスタッフ約70人全員を解雇することはなかった。自社の復旧を後回しに、高齢世帯の多い近隣住民の復旧支援でスタッフも派遣し続けた。

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絶対にくじけない

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篠崎倫明さん

「豪雨の後、テレビ局などのインタビューでよく『(経営は)大丈夫なんですか?』と聞かれたんですけど、『大丈夫です』と答えていました。根拠はあります。われわれには幸いなことに、国菊のあまざけがあります。甘酒を造りさえすれば、大丈夫。もちろん、今後の資金的な裏付けもありました。そして、何より、僕はめちゃくちゃ失敗をしてきている男。僕は酒造業界で一番失敗をしている男だと思っています。だから、水害なんかでくじけません」

篠崎の跡取りで、経営企画部長の篠崎倫明さんは力を込めた。

創業約220年の老舗酒蔵に訪れた試練。それを乗り越え、懸命に前に進む篠崎を、博多日本酒吟醸香は追う。