杉玉は「新酒ができました!」のサイン
造り酒屋の軒下にぶら下がっている、まん丸の玉を、「杉玉(すぎだま)」と言う。その名の通り、杉の葉を束ねて球状にしたものだ。
杉玉は「うちは酒蔵ですよ!」という看板の役目とともに、「ことしの新酒ができましたよ!」とお客さんに伝える意味がある。
酒神・大神神社(奈良県桜井市)の御神体である三輪山の杉にあやかった、とされる杉玉。酒林(さかばやし)とも呼ばれ、江戸時代から、酒蔵の目印として、入り口に吊るされていた。その後、新酒をしぼるころに、杉玉をつくり、飾ったことから、新酒ができたことを知らせる役割を果たすようになった、と伝えられる。
秋に収穫したお米で造る日本酒は、一般的に秋から年末にかけてしぼられる。そのころに新調する杉玉は、青々としたフレッシュな葉っぱだから、緑色をしている。緑鮮やかな杉玉を見られるのは、実はこの時期だけ。日本酒党は、グリーンの杉玉を見ると、心が浮き立つわけだ。
杉玉は軒下にずっと吊るしているうちに、葉っぱが枯れてだんだんと茶色に変わっていく。それは、新酒が熟成していく具合を物語っている。
緑の杉玉を見たら新酒を、色が茶色に変わるに連れて夏酒や秋のひやおろしを、クイッと傾ける。昔の人たちは、季節の移ろいを杉玉の色に重ね合わせて、日本酒を楽しんでいたわけである。何とも日本人らしい風情のある話だ。
杉玉はどうやってつくるの?
杉玉はどうやってつくるのか? まずは針金で芯をつくる。そこに、杉の葉を生花のように1本1本、下の方から挿していく。全体にまんべんなく杉の葉が挿さったら、最後はカット。きれいに球形になるように、刈りそろえれば完成だ。
ちなみに、喜多屋(福岡県八女市)には、直径3メートル、推定3トンの日本最大級の杉玉がある。すべて手作りの巨大杉玉は、中庭に飾られているので一見の価値あり!