酒蔵開きシーズン到来
福岡県の多くの蔵で日本酒造りが佳境を迎えている。今シーズンの新酒を披露する蔵開きも、各蔵で始まっている。
3月4、5日には八女市の喜多屋で酒蔵が開放され、200円のぐい呑を購入すれば新酒を好きなだけ味わえる。
そして、筑後地方の矢部川流域の9つの酒蔵が一堂に会したイベントが4月8日の土曜日、九州新幹線筑後船小屋駅前の九州芸文館で開かれる。3回目の筑後七国酒文化博を前に、イベントにかかわる人たちを紹介したい。福岡の地酒を愛してやまない人たちである。
筑後の酒はレベルが高い
陶芸家 安西司さん
本業は陶芸家です。九州芸文館で交流事業も担当していて、矢部川流域の文化発信が僕に課せられたミッションです。地元・福岡県筑後地方の素材を磨き、その素晴らしさを再認識し、外に向けて発信できたらと活動しています。
これまでに地元の祭りを集めたイベントや、家具の街・大川の建具を集めたイベント、久留米絣(くるめがすり)のイベントなどを開いて、筑後の文化を紹介してきました。筑後って、伝統工芸の一大地域なんですよ。大川の建具や久留米絣のほかにも、雛人形、提灯、仏壇などがつくられています。筑後外の人たちに誇れるものがたくさんあるんです。
でも、地元の人にとっては当たり前のことすぎて、その良さを見落としがちなんですよね。積極的に地元の素晴らしい文化を発信しようとしない。そこで、僕がメッセンジャーとして筑後の文化を紹介するイベントを開いているわけなんです。それは、地元の人にとっても、筑後の良さを再認識するきっかけになるんです。
日本酒も、筑後の素晴らしい文化の一つです。昔は、酒屋には地元の酒蔵がつくった地酒しか置いていませんでした。冠婚葬祭では、地酒が提供されてきました。今、町の酒屋が消えていっています。量販店に行けば、全国のお酒が手に入る時代。地元の人たちが地元の酒の特徴を言えなくなっています。
地元の人が味を知らなくて、何が地酒だ。そう思いませんか。だから、「筑後七国酒文化博」を開くんです。矢部川流域は山の幸、そして有明海の幸が豊富です。酒のつまみになる食材に事欠きません。地酒のうまさを地元の方にわかってもらい、大いにお国自慢してもらいたいな、と思っています。ことしは9蔵(日本酒8蔵、焼酎1蔵)が集まるんで、おれは繁桝が1番だなとか。いやいや、おれは喜多屋が好みだとか。自分の酒を見つけてほしいですね。
僕は大川市の出身なんですが、地元の酒が大好きです。「筑後七国酒文化博」を始めて、各蔵の酒を飲み比べるようになって、味の特徴がめちゃくちゃ違うことに気づいたんです。そして、年によって、僕の中の一番うまい酒をつくる蔵が変わります。
喜多屋と高橋商店(繁桝)の酒は、安定感がありますね。そして、筑後の酒蔵関係者が「ことしの藤娘はうまい」と言っているそうなので、製造元の後藤酒造場の酒には注目しています。その近所にある旭松酒造の「松和」は、去年はうまかったので、ことしはどうかな。若波酒造の「若波」の青ラベルは、みなさんにぜひ飲んでほしい銘柄です。
菊美人酒造には、特別な裏メニューがあって、いつも狙っています。でも蔵開き限定なんでお目にかかれないなあ。西吉田酒造は焼酎蔵として唯一の参加なので、地元の蒸留酒も味わってほしいです。
今回の参加で最も小さい蔵が玉水酒造です。うまい酒をつくるんですよ。地元農家に栽培してもらっている「神力(しんりき)」という酒米を使った、その名も「神力」。玉水酒造の酒はネットにも出てないし、行かなければ買えない。まさに地酒です。
今シーズン、酒造りを休業した目野酒造は、柚子のリキュールと焼酎で参加します。昨シーズンの日本酒は、個人的に一番うまかったと思っていまして。再開が待ち遠しい蔵です。
各蔵に個性があって、自分好みの酒がきっと見つかると思います。飲み比べできるので、和気あいあいと飲み会のような気分でお越しください。帰り際に「筑後の酒はレベル高いよね」。そう思ってもらえると、うれしいですね。
第3回筑後七国酒文化博
4月8日(土曜日)12時~18時、九州新幹線筑後船小屋駅横の九州芸文館で開催。参加蔵は日本酒蔵の後藤酒造場、旭松酒造、高橋商店、喜多屋、若波酒造、菊美人酒造、玉水酒造、目野酒造と焼酎蔵の西吉田酒造の計9蔵。1蔵3~5銘柄の酒が1杯100円~300円で味わえる。地元食材のおつまみも販売している。前売りチケットは1000円(1100円分)、当日チケットは1000円。問い合わせは、九州芸文館(0942-52-6435)へ。
九州芸文館 2013年4月に開業した福岡県の施設で、正式名称は「筑後広域公園芸術文化交流施設」。九州新幹線の筑後船小屋駅前に建物がある。芸術文化・体験・交流を三本柱にして事業を展開。安西さんは陶芸教室の講師も務める。