博多百年蔵 その2

博多の街中に残る蔵

福岡都市圏で9割以上を販売

蔵の奥に、直売所がある。吟醸、純米酒、この時期はスパークリングが数多く並んでいる。

「もともと団体のお客様用に直売所を立ち上げたのですが、年々個人のお客様が増えています。うちは、この直売所での販売の割合が大きく、福岡都市圏で9割以上を販売しています。最近では、海外に販路を広げる酒蔵も多いのですが、うちは全く考えていません。

ただ、海外のお客様が非常に増えています。韓国、中国、台湾、香港、シンガポール、団体だとタイの方など、それに加え、九大の学会のレセプションなども多いので、年間数千人規模で海外の方に足を運んでいただいています。ここ5年ぐらいで、海外の方の動きが個人化し洗練されてきたと感じています。例えば、神社などのように日本の古き良きものを肌で感じる場所としての役割を担っていると感じています」。

平成23年の火災で、自分たちが思っている以上にまわりの皆さんに大事にされていることを実感

平成23年10月8日、蔵で火災が発生し、約1000m²を焼失した。

「自分たちが思っていた以上に、周りの声が大きくて驚きました。翌日には、お見舞い行列ができたほどです。今年で147年になるのですが、たまたまこの場所に存在して、みなさんにとっての心象風景になっているんだなあと。自分たちが思っている以上に、みなさんに思っていただいていることを痛感しました。それ以降、もっとこの建物を大事にしていこうという思いが強まりました」。

平成27年6月には、醸造場である白壁蔵が完成。フレッシュローテーションで日本酒を提供

昔ながらの蔵は販売所や結婚式場などに活用していくうちに、肝心の酒造場のスペースが狭くなっていった。そこで、平成27年6月に、醸造場である白壁蔵を建設。「量は追わないけれど、きちんとしたもの」を造るため、「小仕込」「通年醸造」「フレッシュローテーション」など博多百年蔵が目指す酒造りに必要な設備を兼ね備えた現代的な醸造場が完成した。

「ある程度熟成させてから提供する日本酒も確かにいいものです。しかし、うちが提供するのは、搾り立てのフレッシュなお酒。うちのような規模だと何かを明確に出して、何かを切り捨てなければ、中途半端なものになってしまいます。なので、フレッシュローテーションに特化しています。小さな仕込みでフルーティーな香り高いお酒をフレッシュな状態で、1年中提供していきます。

通常は1回の仕込に800kg~2トン程の酒米が使われることが多いのですが、うちでは400キロから一番大きな仕込でも800キロ。小さなサイズで造ることで、新しいモノをどんどん提供できるようになっています。最近は、フレッシュなものを好まれるお客様が増えています。直売所では、注文が入ってから、冷蔵タンクから直接瓶に注いで販売しています。通常搾り立ては、2、3月の蔵開き時期など限定販売が多いのですが、うちの場合、よりフレッシュな搾り立てが、1年中いつでも飲めると好評です。

また、ヤブタとよばれる圧搾機械で搾る蔵が一般的なのですが、うちは、酒袋に醪を入れて搾る昔ながらの槽しぼりで、2日半かけて搾ります。手間と時間がかかりますが、これもうちに合ったやり方です」。

暑い時期は、スパークリングが人気。若い人にとって、日本酒の入り口になれば嬉しい

この時期、直売所には、スパークリング清酒が数多く並んでいる。

定番のスパークリングは、ふくおか夢酵母を使った「スパークリング清酒 あわゆら」と博多あまおうで醸した「博多スパークリング あまおう」だ。

「この時期は、スパークリングがよく売れます。特に若い人に好まれる傾向にあります。20年ほど前、若い人にとって日本酒は、少々野暮ったいものでした。しかし、最近では、若い人にとって、日本酒は新しいモノになっている気がしています。

普段、ビールやチューハイなどアルコール度数を低いものを好む方にとっては、15から16度の日本酒は飲みにくいと感じるかもしれません。スパークリングのようなアルコール度数の低いものが、日本酒の入り口として、美味しいと感じていただき、徐々に吟醸酒や大吟醸を試してみようと思っていただけると嬉しいものです。若い人が日本酒の入り口に立ってくれるようになったのが、ここ数年の大きな変化だと感じております」。

 定番のスパークリング以外に、限定品としてアルコール度数が11度と通常より高めの「スパークリング清酒 あわゆら ドライ」も販売されていた。

「通常のスパークリングは、アルコール度数7度で甘めのお酒なんですが、夏のイベントを行った時に、アルコール度数を12度まで上げたドライを提供してみたんです。それが好評でしたので、今回、ドライを販売することになりました。タンクが小さいので、新しいものを試しやすく、しかも直売所で販売できるので、季節限定品なども積極的に造っています」。

これからも、博多の顔として、文化の発信どころとして、昔ながらの蔵と日本酒文化を後世に伝え続けてほしいと心から思う。

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施設名
博多百年蔵
住所
福岡市博多区堅粕1丁目30-1
電話
092-651-1986
URL
https://www.ishikura-shuzou.co.jp/
営業時間
11時~19時
定休日
年始、お盆