寒北斗酒造 その1

福岡で地酒文化をつくろうと、33年前から酒屋とともに挑戦し続ける。寒北斗酒造その1

嘉穂劇場から、車で30分。福岡県嘉麻市にある蔵元が、享保14年(1729年)創業の寒北斗酒造だ。蔵元の名と同じくする銘柄「寒北斗」が看板商品で、9割がた福岡で飲まれている。

この「寒北斗」の発売は、昭和60年(1985年)に遡る。その看板商品が大きく育つと同時に、平成23年(2011年)には「玉の井酒造」から、「寒北斗酒造」に社名を切り替えた。「寒北斗」には、なんだか並みならぬ決意が秘められているように感じた。

酒蔵の朝は早い。朝6時半、前日に洗米・浸漬(しんせき)した米を大きな甑にかける。朝9時。酒米が蒸しあがると、たちまち湯気が視界を遮る。製麹や酒母づくり、醪仕込みなど慌ただしく作業が行われていた。

米が蒸しあがったら、まずは計量を行う。

こちらは、酒母(酛)用の蒸米。後から仕込む。

麹造り用の蒸米。機械に通し、温度が落ち着いたら、熊本「9号酵母」を振りかけていく。酒米を35パーセント磨く大吟醸は繊細なので、機械を使わず全て手作業。

酵母を振りかけた蒸米は、袋で包み、担いで2階の麹室へと運ぶ。

麹菌がしっかり米に入るように人の手で揉みこみ、均一になるよう広げていく。麹造りの記事はこちら

麹造りは、2日間かかる。温度管理が肝心だ。寒北斗酒造では、 10月の2週目から3月末まで日本酒の仕込みを行うため、蔵人は蔵に泊まり込む。

酒造りに携わるスタッフは、総勢8名。社長である杉田祐二さんもその中にいた。

作業を見学させていただき、ひと段落したところで、話を聞かせていただいた。

「寒北斗」は、33年前の昭和60年(1985年)、福岡の酒を福岡で売っていこうと、酒屋さんとともに取り組んだ酒

「福岡で『地酒』に取り組みはじめたのは、うちが最初だったのではと思います。『寒北斗』を造りはじめたのは、今から33年前。その当時は、灘と伏見が全盛でした。

『地酒』というのは、その字の通り地の酒。福岡の地で生まれた酒のこと。当時、要は福岡の酒を福岡で売っていこうと、酒屋さんと蔵元が一緒に取り組んでいる酒はなかった。新潟ではすでに『越乃寒梅』などが取り組みはじめていて。福岡でもそういう『地酒』がほしいという酒屋さんが、出てき始めたんです。福岡には『地酒』という文化が、まだありませんでしたから。

しかし、そろそろ、安売りがはじまるんです。デスカウントストアが登場するんです。今まで酒屋は酒の免許に守られて、専売特許で利益も取れていましたが、同じ商品であれば、安い値段で買いたいですよね。おそらく、その流れは福岡にも来る。それなら、きちんとした美味しいお酒、酒屋さんも安売りしないでいいお酒を、福岡の『地酒』として造ろうとスタートしたのが、『寒北斗』」と杉田さんは話す。

とはいえ、その当時、「玉の井酒造」では、「普通酒」をメインに造っていた。

「当然、純米とか吟醸とか特定名称酒は造っていなかったので、今までのような造りでは、できません。なので、1発目は大変な思いだったと思います。その当時、60%の精米なんてわずかな蔵しかやっていませんでしたから。『寒北斗』は、65%まで精米した『本醸造』からスタート。僕はこの時代にいなかったから、入社してその歴史を知って、『寒北斗』は、すごい酒なんだと感じました」。特定名称酒の説明はこちら

「寒北斗」は、4軒の酒屋で1升瓶600本からスタートした。「一緒にやりたい」という酒屋が増え続け、今では180軒の酒屋と取引きを行う

現在は、本醸造だけではなく、純米、吟醸、純米吟醸、「寒北斗純米大吟醸吟遊」「寒北斗大吟醸吟遊」などを展開。ちなみに、「寒北斗純米大吟醸吟遊」は、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」で提供されている。

4軒の酒屋で1升瓶600本からスタートした「寒北斗」は、現在、180軒の酒屋と取引を行う。

「今、10万本になって、ありがたいことに、少しずつ伸ばしていくことができる。それができるのは、安売りしないとか、金額を統一するとか、暗黙の了解で酒屋さんがきちんと守ってくださっているから。だから、うちも、約束を守って、卸す酒屋さんを限定しています。お互いが約束を守ってやっているから、おかげさまで今でも何とかやれているし、先代から受け継いだものを守っていくことができるのです」。

寒北斗酒造 その2へとつづく。

 

施設名
寒北斗酒造
住所
福岡県嘉麻市大隈町1036−1
電話
0948-57-0009
URL
http://kanhokuto.com/
営業時間
9時~17時
定休日
1月1~3日
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